この記事の対象読者
- 九州大学(理系学部)を目指す受験生
- 九大入試の戦略的なアプローチを知りたい人
- 科目別の具体的な対策法・参考書ルートを知りたい人
九大入試の基本戦略
九大入試を攻略するための3つの柱は、「最適な得点配分」「最適な時間配分」「科目別戦略」です。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」。まずは敵(入試)と己(現状)を正確に把握することから始めます。
合格に必要な得点(ゴールの把握)
九大入試では、志望学部によって目標得点が異なります。合格最低点ギリギリではなく、余裕を持った目標設定が重要です。
| 志望 | 目標得点 | 満点 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 理学部・工学部・農学部 | 700〜750点 | 1150点 | ほとんどの年で合格最低点を超える |
| 医学科 | 950点 | 1150点 | 全科目で高水準が必要 |
受験生の4タイプと戦略(己を知る)
自分の得意・不得意に合わせて戦略を立てます。受験生は「数学の得意/不得意」と「努力量の多/少」で4タイプに分類でき、それぞれに最適な戦略があります。
- 英語・化学を盤石にする
- 生物選択も視野に入れる
- 共テで稼ぐ先行逃げ切り戦略
- 附設・ラサール最上位層
- 戦略を間違えなければ余裕合格
- 数学・物理・化学で荒稼ぎ
最適な得点配分
① 数弱×努力家タイプの場合
数学が苦手だが、コツコツ努力できるタイプ。英語、化学を盤石にし、共通テスト高得点で逃げ切る戦略。
| 志望 | 英語 | 数学 | 物理 | 化学 | 共テ | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 工学部 | 140 | 100 | 50 | 80 | 380 | 750 |
| 医学科 | 160 | 150 | 100 | 100 | 440 | 950 |
医学科の場合は、事実上の天井と言われている英語160点と共通テストとで合わせて600点を確保し、残り500点から7割の350点を拾いに行く戦略を考えます。
② 数強×努力家タイプの場合
附設やラ・サールの最上位層に多いタイプ。全教科のオールラウンダーとして、他を圧倒して快勝する。
| 志望 | 英語 | 数学 | 物理 | 化学 | 共テ | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 工学部 | 140 | 200 | 100 | 90 | 420 | 950 |
| 医学科 | 160 | 220 | 110 | 110 | 450 | 1050 |
数学220点、理科も高得点で合計1050点を目指す首席コース。
③ 数強×怠惰タイプの場合
進学校の深海魚に多いタイプ。地頭は良いが勉強しない。数学、物理、化学で稼ぎ、英語・共テは最低限で耐える。
| 志望 | 英語 | 数学 | 物理 | 化学 | 共テ | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 工学部 | 80 | 200 | 100 | 70 | 350 | 800 |
| 医学科 | 110 | 200 | 120 | 100 | 420 | 950 |
伸ばすのに時間がかかる英語・国語・共テは最低限の得点を確保し、旧帝大の中では超高得点を狙いやすい数学・理科(特に物化)に特化します。
④ 数弱×怠惰タイプの場合
まずは1日6時間安定して勉強できる耐性を身につけましょう! とりあえず努力できるようになってから、①のタイプへ移行します。
必要な勉強時間
九大合格に必要な勉強時間の目安です。
部活生の場合
- 高1〜高3夏まで:100hr × 30ヶ月 ≒ 2500hr
- 部活引退後:200hr × 7ヶ月 ≒ 1500hr
- 合計:約4000時間
部活をやっていない場合
- 高1〜高2:150hr × 20ヶ月 ≒ 3000hr
- 高3:200hr × 10ヶ月 ≒ 2000hr
- 合計:約5000時間
部活をやっていなければ、早期に大量の時間を投下できて学習後半にレバレッジをかけられるため、数値の差以上に有利です。
九大合格への時間確保
コラム:「参考書ルート」の考え方
「最高の参考書」は存在しませんが、「最適な参考書」は存在します。参考書学習の目的は、新しい「スキーマ(思考や知識の枠組み)」を獲得することです。もし参考書を使っていてピンと来ない場合は、自分に合ったスキーマを持つ参考書への乗り換えを検討しましょう。
科目別戦略:英語編(200点満点)
目標得点
- 工学部:140点(70%)
- 医学科:160点(80%・事実上の天井)
九大英語の特徴
- 読解3題 + 英作文2題の大問5題構成
- 120分200点満点
- 分量が多く、記述の解答コストが高い
- 160点以上は至難の業
- 英語での解答を要求する読解問題もある
伸び悩む理由
- 基礎知識(単語・文法)の不足
- 解答の手がかりを見つけるのが遅い(現代文力不足)
- 記述答案作成に時間をかけすぎている
- 英作文の基本例文暗記を怠っている
- 単語・文法の基礎を高1で完成
- 英検をペースメーカーに活用
- 過去問で時間配分を練習
- 基本例文を徹底暗記
学習順序
- 第一段階(知識習得): 単語・熟語・文法を固める
- 第二段階(技能習得): 英文解釈を経て、長文読解へ
- 第三段階: リスニングと英作文
大問別出題形式
| 大問 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| [1]-[3] | 英文読解(120-130点) | 500語前後のアカデミックな長文、記述問題中心、1問20-25分 |
| [4]-[5] | 英作文(70-80点) | 意見論述(100語)やデータ解釈(80語)、負担が大きい、1問20分 |
参考書リスト
| カテゴリ | 参考書 |
|---|---|
| 単語・熟語 | ターゲット1900、システム英単語、LEAP、速読英単語 |
| 文法 | NextStage、Vintage、英文法入門10題ドリル |
| 英文解釈 | 英文熟考(上・下)、入門英文問題精講→基礎英文問題精講 |
| 長文読解 | 基礎英語長文問題精講、全レベル問題集英語長文6 |
| 英作文 | 英作文基礎10題ドリル、竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本 |
英語学習ルート(140/200目標)
実例(筆者の場合:133/200)
高1でセンター同日140点、高2で180点まで伸びましたが、高3で東大対策に特化した結果、九大本試では133点と伸び悩みました。形式への適応も重要です。
科目別戦略:数学編(250点満点)
目標得点
- 工学部:150点(60%)
- 医学科:200点以上(80%)
九大数学の特徴
- 大問5題、150分、250点満点
- 難易度の振幅が大きい(年度により差がある)
- 数IIIや複素数が難しく、多項式や整数の抽象的な論述も頻出
- 5点刻みで甘めの減点方式と推定
伸び悩む理由
- 応用問題を既知のパターンに帰着させる訓練不足
- 再現性のある解法意識の欠如
- 計算が不正確で処理速度も遅い
- 易問と捨て問を見抜く選球眼不足
- まず定石を収集し、次にそれを組み合わせる
- 選球眼を鍛えて問題選択
- 「大学への数学」で難易度感覚を磨く
- 再現性のある解法を身につける
学習順序
受験数学には「解法蓄積(レベル0)」と「解法選択(レベル1, 2)」の段階があります。まずは定石を収集し、次にそれらを組み合わせて問題を解く訓練を行います。
得点最適化の理論
高得点に必要な4要素は「計算力」「思考力」「判断力」「選球眼」です。特に「選球眼」は、主観的な難易度と客観的な難易度(『大学への数学』のA,B,C,D評価など)を擦り合わせることで鍛えられます。
教材選定
| レベル | 教材 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 網羅系 | 青チャート、Focus Gold | 800時間 |
| 入試問題集Lv1 | 1対1対応の演習、スタンダード演習、プラチカ | 200-300時間 |
| 入試問題集Lv2 | ハイレベル数学の完全攻略、新数学演習 | 150-300時間 |
| 過去問 | 世界一わかりやすい九大数学など | - |
九大医を目指すなら、Lv1を2-3冊、Lv2を1-2冊こなすのが目安です。
数学学習ルート(6割目標)
数学学習ルート(8割目標)
実例(筆者の場合:235/250)
高1で数IIIまで終了し、高2で新数学演習まで到達。東大模試でも偏差値60後半をキープし、本番では235点を獲得しました。
科目別戦略:物理編(125点満点)
目標得点
- 工学部:80点(64%)
- 医学科:110点以上(88%)
九大物理の特徴
- 大問3題(力学・電磁気・その他)
- 理科2科目で150分
- 標準的な難易度だが、後半に思考力を要する論述やグラフ問題がある
- 医学科志望は満点を含めた高得点勝負
伸び悩む理由
- 公式の適用場面などの基礎知識不足
- 問題文を数式に変換する訓練不足
- 計算に忙殺され、現象を俯瞰できていない
- 公式の本質を深く理解する
- 多くの物理的構図に触れ瞬発力を上げる
- 次元・符号チェックを徹底
参考書リスト
| カテゴリ | 参考書 |
|---|---|
| インプット | 宇宙一わかりやすい高校物理、物理のエッセンス |
| 基礎固め | リードα、セミナー、良問の風 |
| 問題演習 | 名問の森、難問題の系統とその解き方 |
| 過去問 | 九大の物理15ヵ年 |
物理学習ルート(8割目標)
実例(筆者の場合:107/125)
高2で名問の森まで進め、高3では東大模試で偏差値60。再受験時は名問の森を復習し、本番で107点を獲得。
科目別戦略:化学編(125点満点)
目標得点
- 工学部:80点(64%)
- 医学科:100点以上(80%)
九大化学の特徴
- 大問5題(理論3題、有機2題)
- 無機化学は理論との融合問題として出題
- 高分子が必ず大問1つ出る
- 各大問内に平易な問題と難解な問題が混在
伸び悩む理由
- 基本的な暗記の穴(構造決定や客観問題での失点)
- 知識を引き出す訓練不足
- 計算に忙殺されている
- 暗記事項を完璧に(即答レベル)
- 高分子の対策を怠らない
- 計算処理のスピードを上げる
参考書リスト
| カテゴリ | 参考書 |
|---|---|
| インプット | Doシリーズ(鎌田・福間の講義)、原点からの化学 |
| 基礎固め | リードα、セミナー化学 |
| 問題演習 | 重要問題集、化学の新演習 |
| 過去問 | 九大の化学15ヵ年 |
化学学習ルート(8割目標)
実例(筆者の場合:97/125)
高2で重要問題集、新演習まで進め、高3で東大模試偏差値65。再受験時は新演習を復習し、本番で97点を獲得。
モデルルート(九大理系志望)
高1
| 時期 | 英語 | 数学 | 理科 |
|---|---|---|---|
| 4〜7月 | ターゲット1900、英文法10題ドリル | 青チャートIA | - |
| 8〜12月 | 入門英文問題精講 | 青チャートIIB | - |
| 1〜3月 | 英作文基礎10題ドリル(英検準2級目標) | 青チャートIII | - |
高2
| 時期 | 英語 | 数学 | 理科 |
|---|---|---|---|
| 4〜7月 | 基礎英文問題精講 | 理系数学のプラチカIAIIBC | 宇宙一物理、Doシリーズ化学 |
| 8〜12月 | 基礎英語長文問題精講 | プラチカIII | セミナー物理・化学 |
| 1〜3月 | 基礎英作文問題精講(英検2級目標、九大本試140/200目標) | プラチカIII(共テ同日160/200目標) | 良問の風、重要問題集 |
高3
| 時期 | 英語 | 数学 | 理科 |
|---|---|---|---|
| 4〜7月 | 共テ模試160/200目標 | プラチカIII | 良問の風、重要問題集 |
| 8〜11月 | 九大過去問5年分 | 九大過去問15年分 | 九大の物理・化学15ヵ年 |
| 12〜2月 | 直前演習 | 直前演習 | 直前演習 |
3年間の全体像
実際の合格者の得点例
九大医学科合格者(いのうえ・再受験)
| 科目 | 得点 |
|---|---|
| 英語 | 133/200 |
| 数学 | 235/250 |
| 物理 | 107/125 |
| 化学 | 97/125 |
地方公立高校の運動部に所属しながら、東大理二と九大医学部に合格。数学で圧倒的な得点を取り、理科でも高得点を確保。
- 合計700〜750点が目安
- 数学3完でOK
- 苦手科目があっても挽回可能
- 合計950点が目安
- 数学4完以上が必要
- 全科目で高水準が求められる
まとめ
- 目標得点を明確に:九大理系は700〜750点、医学科は950点を目安に
- 自分のタイプを把握:数学の得意/苦手、努力量に応じた戦略を立てる
- 科目別に優先順位をつける:得意科目で稼ぎ、苦手科目は最低限を確保
- 参考書は定番を確実に:青チャート、名問の森、重要問題集など実績のある教材を使う
- 過去問は15年分:九大の傾向を体に染み込ませる
九大入試は、正しい戦略と十分な努力があれば、確実に合格できる試験です。
“If You Act the Genius, You Will Be One.” (天才に成るには、天才のふりをすればいい) — サルバドール・ダリ
自分を信じ、出来る人の真似をして、正しい戦略で努力を積み重ねれば、皆さんも必ず目標を達成できます。自分の可能性を信じ、まだ見ぬ才能を解き放ってください!